モンテッソーリ教育に興味がある、またはモンテッソーリ教育を始めたものの、モンテッソーリ教育を受けた後の子どもの成長についての知識が不足していて、このままモンテッソーリ教育をやっても良いのだろうかと思ったことはありませんか。
この記事では、そのような悩みを解決するための本として、相良敦子(2017)『増補新版 モンテッソーリ教育を受けた子どもたち 幼児の経験と脳』株式会社河出書房新社(以下、『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』)を紹介します。
こんにちは。ダイチです。
2人の子ども(2歳差)の父親で、子どもが自立・自律した人間の礎を築くことを教育によって支援したいと思っています。
この記事によってモンテッソーリ教育を受けた後の子どもが”順序立ててものを考えることができるようになる”などの姿をイメージできるようになり、自信を持ってモンテッソーリ教育を実践することに貢献できれば幸いです。
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』とは
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』とは、日本のモンテッソーリ教育の第一人者である相良敦子さんの著書の1つです。
著者
著者・相良敦子さんは、日本モンテッソーリ協会理事をされていた方でもあります。
著書に
- 『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』(講談社)
- 『お母さんの「敏感期」』(文藝春秋)
- 『幼児期には2度チャンスがある』(講談社)
- 『親子が輝くモンテッソーリのメッセージ』(河出書房新社)
- 『お母さんの「発見」』(文藝春秋)
- 『お母さんの工夫』(共著)(文藝春秋)
などがあります。
私は本書を読む前に、既に『お母さんの「敏感期」』と『マンガ版 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』を読んでいます。
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内容
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』の内容は、そのタイトルどおりモンテッソーリ教育の内容というよりも、モンテッソーリ教育を受けた子どもたちがどのように成長したのかに焦点を当てています。
私が本書の内容をざっくりと分類すると下記の3点が本書の内容になると考えています。
- モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例
- 正常化への道
- モンテッソーリ教育が前頭葉を育てる(と思われる)こと
突然、前頭葉という言葉が出てきて面食らうかもしれませんが、それは本書のサブタイトルが「幼児の経験と脳」と書かれていることに関連します。
1990年代以降、前頭葉の働きが一般的に語られるようになり、前頭葉がよく育っている人の特徴とモンテッソーリ教育を受けた子どもたちの特徴が合致することに著者が興味を持ったようです。
そのため、本書はモンテッソーリ教育の現場で実現した成果を脳科学者に提示するという側面もあるようです。
そこで本書には、モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの特徴と前頭葉の働きの関連性についても書かれているのです。
モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』は、そのタイトルどおり全編にわたりモンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例が登場します。
本書で出てくる事例のほとんどは、モンテッソーリ教育の成果が表れている事例です。例えば、順序立ててものを考えることができるようになるなどです。
モンテッソーリ教育について興味を持った親が子どもに望んでいるだろう子どもの成長の姿を垣間見ることができます。
また、次の項目と関連しますが、当初は問題児的だった子どもがモンテッソーリ教育を受けて変化していく事例も出てきます(正常化への道)。
著者の言葉を借りると、モンテッソーリ教育を受けると”人間としての良い在り方、生き方を支える力””人間の美質”を持つようになるといいます。
正常化への道
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』には、モンテッソーリ教育によって理想的に育った姿ばかりが出てくるわけではありません。
繰り返しになりますが、当初は問題児的だった子どもがモンテッソーリ教育を受けて変化していく事例も出てきます(正常化への道)。
ここでいう正常化とは、逸脱した状態(例えば、落ち着きがない、ぼーっとしている)から、子どもが本来の姿になることをいいます。
本書では、「養育上の悪条件」「大人の間違った関わり方」の解消によって正常化が行われるとしています。そして、6歳までに正常化しておきたいとしています。6歳までに正常化されないと、6歳から12歳までの過程で善悪の道徳観の発達や知能の発達に影響が出るからです。
正常化の具体的な方法は、3歳までであれば
- 助けすぎない、待つという接し方をする
- 自分でできるような環境を整える
- 作業をゆっくり見せる
- できる限り子どもの人格を尊重した言葉がけをする
が挙げられていました。
3歳から6歳までの間であれば以下のような過程を経て正常化します。
- 子どもが興味のある作業を見る
- 子どもが見ていた作業を「ゆっくり、はっきり」「して見せる」
- 作業を子ども自ら取り組むことを促す
- 子どもが作業をできるようになるまで見守る
- 作業ができるようになると、子どもは作業を繰り返す。この繰り返しも見守る
- 作業の繰り返しをやり抜いたら子どもは突然作業をやめる。この状態になるまで見守る。
モンテッソーリ教育が前頭葉を育てる(と思われる)こと
前頭葉がよく育っている人の特徴とモンテッソーリ教育を受けた子どもたちの特徴が合致しています。
具体的には、下記のような特徴になります。
- 順序立てて、ものごとを考えることができる
- なにをするにも、計画を立て、順序を踏んで、着実に実行する
- 段取りが良い
- 先を見通すことができる
- 状況の読み取りが早く、臨機応変に対処することができる
- ひとりでたじろがない。責任ある行動ができる
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』では、このような特徴を獲得するために、子どもに作業を「ゆっくり、はっきり」「して見せる」。そして、子どもが手を使うようにするべきだとしていました。
ダイチの感想
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』を読んだ私(ダイチ)の感想は、
- 事例がモンテッソーリ教育の成果なのかは確信が持てなかった
- しかし、事例にある特徴はモンテッソーリ教育の成果なのではないかとも感じた
- 逸脱から正常化への具体例を知ることができて良かった
- モンテッソーリ教育は脳科学的に支持される可能性があると感じた
です。
事例がモンテッソーリ教育の成果なのかは確信が持てなかった
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』に出てくる、子どもたちの成長した姿(事例)はどれも素晴らしいものでした。
- 順序立てて、ものごとを考えることができる
- なにをするにも、計画を立て、順序を踏んで、着実に実行する
- 段取りが良い
- 先を見通すことができる
- 状況の読み取りが早く、臨機応変に対処することができる
- ひとりでたじろがない。責任ある行動ができる
というモンテッソーリ教育を受けた子どもたちの特徴がこれでもかというくらい出てきます。
ですが、モンテッソーリ教育を受けたことと事例にある子どもたちの特徴との間に因果関係があるのかは確信が持てませんでした。
モンテッソーリ・メソッドを受けていれば上記のような特徴を持つ人間になれるのか、(狭義の)モンテッソーリ教育でも大丈夫なのか。幼稚園・保育園の環境や家庭の環境の違いが上記の特徴の獲得にどの程度影響を与えるのかがよくわかりませんでした。
なお、本書に出てくる事例の多くはモンテッソーリ教育の実践園で現れたものだとのことです。
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』では、広義のモンテッソーリ教育をモンテッソーリ・メソッドと狭義のモンテッソーリ教育に分けて定義しています。
モンテッソーリ・メソッドとは、モンテッソーリ教具、モンテッソーリ教師、モンテッソーリ・クラスの三拍子が揃っていて、モンテッソーリ教具の全体系を忠実に実践する教育方法のことをいいます。
狭義のモンテッソーリ教育とは、モンテッソーリが教えてくれた子どもの見方・たすけ方全般のことをいいます。
しかし、事例にある特徴はモンテッソーリ教育の成果なのではないかとも感じた
上記の感想と矛盾するようですが、私は事例にあるモンテッソーリ教育を受けて成長した子どもたちの特徴はモンテッソーリ教育の成果なのではないかとも感じました。
- 子どもが興味のある作業を見る
- 子どもが見ていた作業を「ゆっくり、はっきり」「して見せる」
- 作業を子ども自ら取り組むことを促す
- 子どもが作業をできるようになるまで見守る
- 作業ができるようになると、子どもは作業を繰り返す。この繰り返しも見守る
- 作業の繰り返しをやり抜いたら子どもは突然作業をやめる。この状態になるまで見守る。
という教育環境で育った子どもたちが
- 順序立てて、ものごとを考えることができる
- なにをするにも、計画を立て、順序を踏んで、着実に実行する
- 段取りが良い
- 先を見通すことができる
- 状況の読み取りが早く、臨機応変に対処することができる
- ひとりでたじろがない。責任ある行動ができる
という特徴を持つようになったと言われれば、因果関係は不明ながらも「子どもはそうなるかもしれないな」と私は思いました。
逸脱から正常化への具体例を知ることができて良かった
逸脱から正常化するための具体例を知ることができて良かったです。
この点が、私が『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』を読んで良かった。他の人におすすめしたいと思ったポイントになります。
私は子育てのなかで、本書でいう子どもの逸脱の状態に悩むことがありました。この逸脱の状態は何なのか、どう克服したら良いのかが知りたいと思いました。
その時に出会ったのが、本書の著者が書いた別のモンテッソーリ教育の本『お母さんの「敏感期」』でした。
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『お母さんの「敏感期」』には、子どもには「敏感期」というものがあること、その「敏感期」に対して親が取るべき行動が書いてありました。子どもを見る視点が変わるとともに子どもとの接し方も変わることになり、子育てに良い変化が起きました。
しかし、『お母さんの「敏感期」』には、子どもの逸脱の状態と正常化の方法という観点からの記述はありませんでした。
子どもの逸脱の状態と正常化の方法という観点を私の知識に加えてくれた。それが私にとっての本書の価値です。
モンテッソーリ教育は脳科学的に支持される可能性があると感じた
事例がモンテッソーリ教育の成果なのかは確信が持てませんでしたが、モンテッソーリ教育は脳科学的に支持される可能性があると感じました。
本書の後半で脳の働きとモンテッソーリ教育の関係が書かれていて、モンテッソーリ教育は脳科学的にも有効性が支持されるような教育方法なのだと感じました。
マリア・モンテッソーリが子どもをよく観察し、子どもの行動の理由に疑問を持ち、その奥底にあった生理学的根拠を知るに至った結果がモンテッソーリ教育です。このモンテッソーリ教育が出来上がる過程から考えても、脳科学的に支持される可能性があると感じました。
インターネット上の口コミ
インターネット上の口コミを見てみると、
- モンテッソーリ幼稚園に入れると、日本はモンテッソーリの小学校があまり無いので、小学校に入る際に子供が困るとよく聞かされていたのですが、この本で迷いが無くなりました
- 小学校の教師をしているママ友さんから、モンテッソーリ幼稚園からくる子供達は、とにかくもくもくと取り組むよと聞かされていたのと、この本のお母様方のフィードバックも合致している点が多かったので、この本は購入して良かったと思います
- この本の後半では、モンテッソーリ教育の日常生活訓練やお仕事をすることで子どもの脳がどう変わり子どもが本来持っているよさを発揮する(取り戻す)のかわかりやすく説明してくれています
というようなおすすめする口コミもある一方で、
- 人の性格や能力は、教育ももちろん大事だが、家庭環境や友人との付き合い、人生でのいろいろなターニングポイントで変化していく。その変化をいささか、モンテッソーリ教育のみを基軸に結びつけすぎているキライがあった。
- 本中には、モンテッソーリ教育を受けてきた大学生自身、教員、親の体験談がてんこ盛りです。絶賛の嵐にドン引きしました。特に、我が子がいかに素晴らしい人物に育ったかという親の声。
- モンテッソーリ自体を知るには、他に良書があると思いますので探してみようと思います。
というようなものも見られました。
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』の内容は、タイトルどおりモンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例が主なものになります。
ですので、モンテッソーリ教育に無理やり結びつけた事例に感じたり、モンテッソーリ教育を礼賛する事例集のように感じる人もいると思います。
事例集なので、モンテッソーリ教育について知りたいという点が主眼の人は本書を読むべきではないです。
モンテッソーリ教育がどのようなものか知ったうえで、モンテッソーリ教育を受けた後の子どもたちがどのように成長するのか知りたい。このままモンテッソーリ教育をやっても良いのだろうかと思った人が読むべき本だと思います。
私にとっては、モンテッソーリ教育を実践することに自信を与えてくれた本でした。
メリット・デメリット
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』を読むメリットは、
- モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例を知ることができる
- モンテッソーリ教育の脳科学的関連性を知ることができる
ことになると思います。
本書を読むことによるデメリットは、
- モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例集という内容と読者の目的(例えば、モンテッソーリ教育について知りたい)が合っていない場合、読む意味がない
になります。
おすすめする人
『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』をおすすめする人は、
- モンテッソーリ教育がどのようなものか知っている人
で、
- モンテッソーリ教育を受けた後の子どもたちがどのように成長するのか知りたい人
- モンテッソーリ教育の実践に自信を持ちたい人
のどちらかに該当する人です。
子どものために1日でも早く読もう
モンテッソーリ教育を実践しようとしている人(実践している人)でまだ『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』を読んでいない人には、1日でも早く本書を読んで欲しいと思っています。
私は長男が5歳の時に『お母さんの「敏感期」』や本書を読みました。つまり、モンテッソーリ教育を実践して子育てをするべき長男の「敏感期」のほとんどはとり逃してしまったのです。
「敏感期」とは何かについては、『お母さんの「敏感期」』についての記事で書いています。
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「敏感期」を逃したとしても、やり直しはきくと思っています。思ってはいますが、やはり『お母さんの「敏感期」』と本書を読み、モンテッソーリ教育の実践に自信を持った状態で長男の「敏感期」を過ごしたかったです。
このようにならないために、モンテッソーリ教育を実践しようとしている人(実践している人)でまだ本書を読んでいない人には、子どものために本書を1日でも早く読んでほしいと思っています。
まとめ:自信を持ってモンテッソーリ教育を実践しよう
この記事では、
- モンテッソーリ教育を受けた後の子どもの成長についての知識が不足している
- このままモンテッソーリ教育をやっても良いのだろうか
という悩みを解決するための本として、相良敦子(2017)『増補新版 モンテッソーリ教育を受けた子どもたち 幼児の経験と脳』株式会社河出書房新社を紹介しました。
本書を読むと、
- モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの事例
- モンテッソーリ教育の脳科学的関連性
を知ることができます。
- モンテッソーリ教育がどのようなものか知っている人
で、
- モンテッソーリ教育を受けた後の子どもたちがどのように成長するのか知りたい人
- モンテッソーリ教育の実践に自信を持ちたい人
のどちらかに該当する人は是非とも本書を読みましょう。
本書を読んで、自信を持ってモンテッソーリ教育を実践していきましょう!