自分の子どもに意思のなさを感じる。自分の教育方針がそうさせてしまっているのではないかと思ったことはありませんか。
この記事では、
- いい子症候群
- いい子症候群の背景
- いい子症候群から変わる方法
について書かれている、金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社(以下、『いい子症候群の若者たち』)を紹介します。
こんにちは。ダイチです。
2人の子ども(2歳差)の父親で、子どもが自己肯定感を持ち、意志を持って行動できるようになることに興味があります。
この記事が、子どもが自分らしく生きるとともに、良い親子関係を築くことの一助になれば幸いです。
『いい子症候群の若者たち』とは
著者
『いい子症候群の若者たち』の著者は、金沢大学・教授の金間大介さんです。
本書以外にも面白そうな著書がありました。
概要
『いい子症候群の若者たち』の概要を私なりの視点で整理すると
- いい子症候群
- いい子症候群の背景
- いい子症候群から変わる方法
の3つになると思っています。
いい子症候群
いい子症候群とは何か・どんなものかについては、『いい子症候群の若者たち』の中には明確に出てきません。
主に第1章から第8章にかけて、いい子症候群の若者の行動原則や心理的特徴を紹介しているのが本書になります。
いい子症候群の若者をいじるようなかたちで、いい子症候群の特徴を面白おかしく紹介しています。
ちなみに、本書にも出てくる言葉で敢えていい子症候群を定義すると、横並び主義や意思のなさという特徴を持つ者になるのかもしれません。
いい子症候群の背景
『いい子症候群の若者たち』の第8章から第9章には、いい子症候群の若者が出てくる背景が書かれています。そして、大人へ向けて若者を動かす方法について提案しています。
私の解釈はこうだ。
挑戦が成長につながることを実感できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
(中略)何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない。
金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社
したがって、本書の提言は1つ。
大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ。
あなたが挑戦し、失敗し、そして復活するところを堂々と見せるべきだ。
そのとき、もしそばに若者がいるなら、こう言ってみてほしい。これが現時点で筆者が考える、若者の心を動かす最強のフレーズだ。
「自分はもう一度これをやりたい。今度は絶対成功させたい。だから手伝ってもらえないか」
金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社
いい子症候群から変わる方法
『いい子症候群の若者たち』の第10章には、いい子症候群から変わる方法について書いてありました。
本書の第1章から第8章を書くようないい子症候群の特徴を捉えている著者が、社会に出る前のいい子症候群の若者に向けて社会で生き抜く術を伝えようとしています。
大学でゼミ生を指導する立場にある筆者だからこそ感じるいい子症候群の若者に対する思いが書かれていました。
あなたはそんな状態を「普通」と呼ぶ。「自分は特別なことは全然望まないです。毎日、平穏に過ごせればそれで、普通で十分と思ってるんで。ほんと、欲ないですよね」と言うときの「普通」のことだ。
冗談じゃない。
いい加減夢から覚めなさい。
金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社
どんなに自己肯定感が弱く、内向的で、有能感に乏しく、打合せや会議の席の端っこでおとなしくしていたいタイプだとしても、学習のことだけは自分で決めるべきだ。ほかのことは空気に従い、同調圧力に流されたとしても、何のために、何を学習するか、ということだけは絶対に譲らないでほしい。
その理由は、繰り返しになるが、目的を持った学習は自分を強くしてくれるからだ。
金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社
ダイチの感想
『いい子症候群の若者たち』を読んだ私(ダイチ)の感想は、
- いい子症候群に危機感
- でも、いい子症候群は以前からある
- 著者は若者を育てようとする人
です。
いい子症候群に危機感
『いい子症候群の若者たち』の第1章から第8章までを読んだ時、いい子症候群の若者のどうしようもなさに危機感を覚えました。
著者の経験やデータに基づくいい子症候群の若者の横並び主義や意思のなさという特徴の具体例がでこれでもかと紹介されるので頭を抱えてしまいました。
本書を読んだきっかけは、子どもを持つ親として最近の若者の心理的傾向を知りたかったからです。日本で子どもを育てたらどんな感じになっていくのかを知りたいと思ったからです。
子どもがいい子症候群にならないようにどう子育てをしたら良いのだろうと危機感を覚えました。
でも、いい子症候群は以前からある
『いい子症候群の若者たち』の第1章から第8章を読み進めるなかで感じたことは、危機感だけではなく、実はいい子症候群は昔から日本にある心理的傾向なのではないかということです。
本書にはいい子症候群の発症時期や強化される時期についての記載もあります。その箇所を読んでいると自分にも当てはまる部分があると思ったのです。
いい子症候群の若者は昔から日本に一定数いる。その心理的傾向は年齢を重ねるなかで改善されていく。日本ではこれが繰り返されてきたのではないか。
自分もいい子症候群のような心理的傾向はあった(今もまだ少しある?)と思いました。
そして、人生の経験を重ねるなかで心理的傾向は変わってきたとも思いました。
なので、子どもがいい子症候群を発症・強化することはあり得ると思いました。そうなった場合には、変わることができるように促そうと思いました。
著者は若者を育てようとする人
私が『いい子症候群の若者たち』をこのブログで紹介しようと思った理由は、著者は若者を育てようとする情熱を持った人だと思ったからです。
本書の第10章にはいい子症候群から変わる方法について書いてあると先ほど紹介しましたが、引用した箇所を読んだ時、私は著者の若者に対しての熱量を感じました。
本書で紹介されていたいい子症候群から変わる方法を子育てに活かしてみたいと思いました。
インターネット上の口コミ
インターネット上の口コミを見てみると、
- 若者と接している大学教授だからこその視点。また、若者を研究テーマにしているから、とてもわかりやすく参考になる内容だった
- いい子症候群の若者たちより、私達大人が意識・行動を変えるべき
- 職場にいい子症候群の若者がいてどう向き合っていくか困っていたが、彼らの事が少し理解できた
というようなおすすめする口コミもある一方で、
- 構成が分かりづらかった。誰をターゲットにしているのか、どの立場で読んだら良いのか分からなくなる
- 日本人の国民性とも言えるテーマを、世代間の分断を煽るようなかたちで若者をイジり、読ませよう・売らせようとする感じが好きになれなかった
- レベルの低い大学生を言い表しているだけ。若者全てを言い表わした本ではない
というようなものも見られました。
私も第1章から第8章は、いい子症候群の若者の行動原則や心理的特徴を羅列しているだけのような感じはしました。その一方で、いい子症候群の若者の行動原則や心理的特徴を紹介する形式(いい子症候群の若者をいじるようなかたち)を取っている以上、こういうかたちになってしまうのだろうなとも思いました。第1章から第8章は、いい子症候群の研究が進めば洗練されていく部分だと思っています。
いい子症候群の若者をいじるようなかたちになっている点については、私も若干の違和感を覚えた箇所です。特に、第10章を読んで本書がいい子症候群の若者へ向けて書かれた本であることを認識してからは、第1章から第8章を読んでいる途中でいい子症候群の若者が自分たちがいじられていることで読むことを諦めないか心配になりました。
『いい子症候群の若者たち』が世代の分断になるかというと私はそうは思わないです。第9章で大人へ向けていい子症候群の若者との関わり方について書いていますので。
いい子症候群の若者の特徴が若者全ての特徴ではないことは当然ですね。
私にとっては、いい子症候群を踏まえた子育てをするきっかけになって良かったと思っています。また、このブログの想定読者とは異なりますが、仕事などでいい子症候群の若者と関わる時に役立つと思いました。
メリット・デメリット
『いい子症候群の若者たち』を読むメリットは、
- いい子症候群の特徴
- いい子症候群の背景
- いい子症候群から変わる方法(いい子症候群を変える方法)
を知ることができることです。
デメリットがあるとすれば、
- いい子症候群の若者をいじる形式
- 面白おかしく書こうとする形式
に馴染めない人にとっては、第1章から第8章は苦痛かもしれません。
そういう人は、第1章から読み進めるなかで、いい子症候群の若者の特徴を大体理解できたと思ったら、途中を飛ばして第9章から読んでも良いと思います。
おすすめする人
『いい子症候群の若者たち』をおすすめする人は、
- 最近の若者の傾向に興味がある親
- いい子症候群の子どもを持つ親
- 若手社員を指導する立場の人
です。
特に、いい子症候群の子どもを持つ親は読むべきだと思っています。第10章はいい子症候群の若者が自分で変わる方法が書かれているのですが、これは親がいい子症候群の子どもを変える方法としても使える可能性があると思います。ただし、親主体で、どうやっていい子症候群の子どもを変えていくのかという話はかなり難しい話になります(著者は、第10章でいい子症候群の若者に親に相談することをおすすめしていないため)。親子の関係性を踏まえて本書を活用しましょう。
もし私の子どもがいい子症候群になったら、第10章を参考に、子どもの学習のモチベーションを見極めて学習を促すようにすると思います。
この時に、私から子どもに本書を読むことはおすすめしないと思います。
また、このブログの想定読者とは異なりますが、若手社員を指導する立場の人にも本書をおすすめしたいです。
私は管理職として企業で働いているのですが、今年の新人がまさにいい子症候群的な人でした。本書のおかげで新人への対応にストレスを感じにくくなりました。
子どもの成長のために1日でも早く読もう
いい子症候群という言葉と特徴を知っていると、それを踏まえた子育てができるので、子どもを持つ親には子どもの成長のために1日でも早く『いい子症候群の若者たち』を読んで欲しいと思っています。
本書に書かれているいい子症候群の特徴を全て、しかも強烈に持つ子どもに育ってしまったら、子ども本人にとっても親にとっても大変です。
しかも、発症してから変わるように行動するよりは、いい子症候群の特徴を知って予防するように動いた方が良いと思っています。
まとめ:いい子症候群の特徴を知り、子育てに活かそう
この記事では、
- いい子症候群
- いい子症候群の背景
- いい子症候群から変わる方法
について書かれている、金間大介(2022)『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』東洋経済新報社を紹介しました。
本書にも出てくる言葉で敢えていい子症候群を定義すると、横並び主義や意思のなさという特徴を持つ者でしょうか。
いい子症候群の特徴、背景、いい子症候群から変わる方法(いい子症候群を変える方法)を知ることができます。
私にとっては、いい子症候群を踏まえた子育てをするきっかけになって良かったと思っています。
また、このブログの想定読者とは異なりますが、仕事などでいい子症候群の若者と関わる時に役立つと思いました。
- 最近の若者の傾向に興味がある親
- いい子症候群の子どもを持つ親
- 若手社員を指導する立場の人
には本書をおすすめします。特に、いい子症候群の子どもを持つ親は読むべきだと思っています。
本書を読み、子どもが自分らしく生きることができるように促していきましょう!